京都のお寺には多くの名園があります。およその庭園は極楽浄土を連想して作られており、また、極楽は西方にあるともされております。従いまして、庭の水の流れにしても東から西へ流すことが定石となっているようです。
実相院のお庭は、世阿弥の孫で有名な庭師、又四郎が作ったという池水回遊式の園であります。
そして、この庭の水の流れは西から東に流れております。
西から東、つまり極楽の方へは流れないわけですから、当時、世間の批判は又四郎に集中いたしまして、その時に又四郎この様に申します。
実相院はお寺。寺全体が浄土。その浄土に西も東もあるわけがない。
まさに、とらわれない心です。