以前、京都へのリピーターから「京都らしい魚って何だ?」と聞かれた事がありまして、即答できなかった覚えがあります。
今でも不明確なのですけれど、「よそさんの小生」なりの京都っぽい魚となりますと、丹後でとれる海の魚や京都を流れる川の川魚となりましょう。
特にこれから市場に出回るようなハモ料理の『鱧』、サバ寿司の『鯖』、そして、年から年中あります、にしん蕎麦の『鰊」。この3つくらいが適当なのかと思われます。
今ごろの季節から祇園祭くらいまで食べられる、祭りの「ハモ」。
「サバ」なら、漫画「美味しんぼ」は「いづう」のサバ寿司を全国的に有名にしましたし、若狭から鯖街道を通って運ばれてくる「ひとしおのサバ寿司」も全国的に有名です。
また、南座の芝居のあとにその暖簾をくぐるのを楽しみとして根付いた「松葉」のにしん蕎麦も京都のものとして親しまれておりますから、そのいずれもが京都らしい。そのように思うわけです。
また、これらのいずれもが京都人にとって必要な貴重なタンパク源。
それぞれが重宝されて運ばれてきて、調理され京都の食卓や料理店に並んできた、そんな歴史が京都にはあります。運び込まれる方法として京都らしい工夫がされているのはご存じの通りです。
ハモはまず生命力が強い点に着眼してハモが選ばれている。サバならば、ご存じの通り塩の加減に、またニシンは、その独特の保存方法に伝統的に受け継がれてきた工夫が文化として根付いているわけです。
ですから京都らしい魚とは、さば・はも・にしん。この三つで如何かと思うのです。
いわゆる旬と言われるサカナが一番美味しい時期というものがありますけれど、およそのサカナの旬というのは、冷たい海水の中で生きる為に脂をのらせた冬でしょう。
ところが、京都ではわざわざ夏に食べるのも上記のサカナなのです。
その中でも、取りわけ京都らしいのは『鯖』ではないかと考えています。
わざわざ夏に食べる事については、もうすっかり私もこれに慣れておりまして、冬ではなく少し温かくなり始めたこの季節から口にし始めるのです。
ほかの土地ではどうでしょうか。
たとえば、私が度々行く神奈川県あたりのお寿司屋さんでは、ハモの何かや、ニシンの何かを見かけることはあっても、冬の旬の時期以外にサバを進めるような寿司屋さんにお目に入ったことはない。
その理由を聞くと「旨くない」「魚は他にある」「食中毒」との事だけど、やはりこの鯖を京都人は、わざわざ夏場に「鯖寿司」として重宝がって食べている。
私も、神奈川のお寿司屋さんが言わんとする気持ちも判るが、いくら新鮮でもこの鯖寿司より旨いものはない。モチロン、食中毒なんて話しを聞いたことがない。
今の季節から以降。京都にお越しになったらば、京都の寿司の代名詞的な存在感がるサバ寿司をお寿司屋さんでサバを食べようではありませんか。
なお、持ち帰り用(お持たせ)のサバ寿司については、迷うところです。
お判りになる方なら「いづう」さん。観光的ならば、その「いづう」さんから暖簾分けをゆるされた「いず重」さん。
また「花折」さんもお薦めだけど、もうね、何にしろ京都のサバ寿司は全て旨いのですよ。