阿国庵

ずっと昔から、動物園の近くにあるおソバ屋さん。
店構えや暖簾にも京都の店だという風格をただよわせている店が阿國庵です。
阿国といえば出雲。出雲のお蕎麦といいますと「割子蕎麦」(わりごそば)。
小さな器に蕎麦を盛り分け多くの味わいを楽しむ食べ方が発祥した出雲地方の名物。
これは出雲の殿様が江戸で味わい旨かった蕎麦の実を出雲で栽培させ生まれたもの。
それと同じようにこの阿国庵のオヤジさんも出雲から蕎麦の打ち方を持ってきたわけです。

京都には蕎麦文化が根付いているのですが、その中で昔ながらの蕎麦をとお客様に望まれますと、真っ先に思い出すのはこちらのお店。今流行のお蕎麦とは違いますし、まして京都の町家風と言った雰囲気もありません。しかし阿国庵は「京都で育った出雲の蕎麦」を味わえる店。
出雲蕎麦の味わい方に、京都のダシをからませて、辛味に紅葉おろしを使うのです。


ダシにうるさい京都に根付いている阿国庵のソバつゆ。これは昆布と鰹が満ちており噛んで味わう出雲蕎麦と相まっております。それがお蕎麦自体にある甘さやもちもち感と絡まり合っている。ツユで特筆しておくべきは、「ネギとワサビ」が一般的のなか、こちらでは「ネギと紅葉おろし」という組み合わせで出される。これは辛味大根と一緒に味わうのが最上とされる出雲蕎麦にあうものとして紅葉おろしの辛味が選ばれているためです。


なお、こちらのおソバ屋さんでは、「ズズッー」よりも「モグモグ」が良い。
一般的に蕎麦というのは”ノドで味わうもの”といった感があるのではないでしょうか。たしかにいわゆる3たて(挽きたて 打ちたて 茹でたて)を楽しむといった風潮にあるそば屋さんなら蕎麦はのどごしでいいのかもしれませんが、出雲の蕎麦は噛んで味わってこそ蕎麦の味が深まってくる、それ故の紅葉おろしである。モグモグと紅葉おろしの辛味とともに味わうことこそこちらのお蕎麦の至極でもあるのです。
なお、最後のそば湯のため、少しだけこの「紅葉おろし」を残しておかれることをお薦めする。
訪れた季節がいつでも白いそば湯の中に、文字どおり京都の紅葉を観ることが出来るためだ。

阿国庵
京都市左京区岡崎南御所町40
075-771-1689
11:30 18:00
日曜祝日定休

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阿国庵 (そば / 東山、蹴上)
★★★☆☆ 3.0

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