東京で蕎麦となれば、蕎麦前の日本酒。
それも風情ある内装に囲まれたら、いささか呑みすぎてしまう様な事もありましょう。
出し巻きタマゴに焼き海苔にジュンサイなど、樽の香りが良い日本酒で頂く。
この「東京名店おいしい蕎麦」カテゴリ。どこから書こうかと思ったが、まずはじめは白金台のそば処、「利庵」から。
以前、ジュヴァーナにこのプラチナ通りに連れてこられた事があるからだ。
とはいっても、シロガネーゼなんて誰も言わないそうだから、判りにくいですな。前文を記し直すと、(蕎麦が好きという私を)麻布十番在住の主婦(ジュブァーナ)がわざわざプラチナ通り(白金通り)にあるこの蕎麦店に連れてきてくれた事がある。
当時はまだ、シロガネーゼという言葉が流行っている頃だった。古くから麻布十番に住む彼女は江戸弁でシロガネーゼの事を小馬鹿にしつつ、「アタシたちはジュヴァーナなんて呼ばれてんのよ」なんて会話を思い出す。
なんにしろ、このおいしい蕎麦屋をすすめてくれたのは、そのジュヴァーナだった。
その彼女と久々に再会したのは先日。そしてこの蕎麦店を目指すタクシーの中ではいろいろと話しをした。その彼女は私よりは一回りほど年上で、以前あるご相談を受けてからのお付き合い、もっとも今は私へのご用など無いのだけど、時折はこうやってお呼びいただける、というわけだ。
さて、その彼女は酒を勧めるのが途方もなく上手い。ヘタに断ると、それを逆手にとってご機嫌にされていつの間にかヘロヘロにされる。この技は正にプロ級で「日本酒呑ませ技能士」があるならすぐ推薦だ。これ「嫁ぎ先のお舅さんのお酌で鍛えられた」そうで、ボクなんてイチコロの小僧である。
さらにこの日はバレていた。
ボクが夕方の飛行機で移動したら、そのあとの仕事がない事を知られていた。なのでボクの言い訳ストックはここでゼロ、開き直るしかなかった。だからしこたま飲まされたが幸いにもこの日無事に帰宅していて、こうやって少しは思い出せる。
ここでは風情と言う点で大好きな店だ。だから酒もさらり呑めた。
酒は、升酒で出されて突き出しには海老のオカシラをサッと揚げたもの。これにはパラリと塩が振ってあって、これだけでも美味い。
そう、たしか、卵焼きで、もういっぱい。焼き海苔でも、もういっぱい。ジュンサイでも、もういっぱい。そういっぱい(沢山)呑んだが、どれも酒で溶かされた。
さらに、口元へ蕎麦をたぐったあたりでは、その香りと切れの良い辛汁に目がさめた。
自家製粉のそばは細めで、コシがあって白く美しかった。喉ごしもよく、香りも旨味も十分だった。