近畿三十六不動尊巡礼へのおさそい

「寒熱の 地獄に通う茶 柄杓も 心なければ 苦しみもなし」。
千利休が詠んだこの歌を、二宮尊徳は「この歌の心は無心を尊んで我心を無くすことを言っているが、ただ我を取り去るだけでは役に立たず十分ではない。我を取り去りその上に、一心を定めて不動尊のように心を動かさないことが大切なのだ。今試しにこの歌を詠み直せば」
茶柄杓の 様に心を定めなば 湯水の中も 苦しみはない(二宮尊徳)

先日のお山では、若い人がお年寄りの手をたずさえて声を掛け合っていたり、ご夫婦であろう老夫婦が手を取りあって歩いておられる、おすがたに感動しました。

四国遍路や西国巡礼をされる巡礼者は、たとえひとり旅であっても「同行二人」と笠やおいずるに記して歩きます。
自分以外の一人は、観音さんでありお大師さんの場合もあるでしょうし、それは家族や友人と共に、影と形のようにより添って歩んでいるようです。
人間と人間が手をとって共に歩くのではなく、ほとけと人間、ほとけとほとけが、ともに手を取りあってお詣りをしている、そんな光景なのです。

その光景は、横に並んで歩くときもありますし、前後になっているようなときもあります。
手を取って共に歩く相手は、苦悩にあえいでいる自我の心の奥底に潜んでいるもう一人の自分であることもあります。

このもう一人の自分にめざめていくことが、不動尊巡礼なのです。
お不動様は庶民の仏様として親しまれ、熱心な信仰を集めています。
近畿地方の代表的なお不動様の寺からなるのが近畿三十六不動霊場です。
36カ所の御寺院は、大阪府・奈良県・京都府・滋賀県・兵庫県の2府3県。どうしても数回に分けて巡礼する必要があります。

そこで12ヶ月間、つまり1年をかけて満願できる様、月に一度の霊場参拝コースをお勧めしている次第です。
もちろん、早まわりをすれば4日間あれば満願も出来ます。
しかしこのお勧めコースは、四季折々の季節が創る景観を感じることも出来る様、小生が考えたコース。

たとえば、滋賀県の葛川など紅葉の名所や、奈良県なら吉野の千本桜など、絶妙な時節と穴場的な場所から見物をしたりするというわけです。

小生も本業などを行いながらのことですから、そう自由な時間もありませんが出来るだけ日曜日の一日を有意義にお過ごしいただけるようにと考えております。
興味のある方はどうぞお気軽にお声かけ下さい。

「不動尊信仰」については、永い歴史があり、全国各地にその霊場が広まり、私共の生活の中にとけ込んだ普遍的な信仰となって栄え、信者方個々の信仰対象でもありました。住古より不動護摩には息災・増益・調伏・敬愛と、その御利益については時代に応じて、数多くの願望を達する祈願の成就がされ、その霊場は地方における民俗信仰の中心となっています。
素より、この霊場以外にも由緒有る不動尊信仰の盛んな道場は沢山ありますが、近畿三十六不動霊場は、門跡寺院、総大本山を始めとし、不動霊場として、由緒ある伝灯を護持されている霊場です。
今回の巡礼を通しまして、それぞれの皆様が「お不動様」と素晴らしい「ご縁」を頂けることを祈念し、ここにご案内させて頂きます。

近畿三十六不動尊霊場会 先達 瀬戸 啓一朗

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