古本市で見つけた死の瞬間に体重が減少するというタイトルの本。
タイトルに一瞬躊躇したのだけど、とりあえず手にしてレジに持っていったら二百円。
「命って何だろう。科学者である私が、この瞬間に真正面から取り組むことになったきっかけは、植物との出会いでした。当時から、私は岩石や鉱物に含まれるミネラルについての研究を重ねていましたが、農業関係者からある相談を持ちかけられたのです。」
本書の著者、川田薫氏は、東京大学地震研究所・物性研究所などを経て企業の金属研究所などに勤務するかたわら、旧通産省(現経産省)の委員をつとめられた理学博士です。
岩石鉱物の専門家である氏の研究が作物の生育に不可欠となる土壌の改良に役立つのではという理由から、植物との関わりを始めたとのことだ。
そして、氏はその関わりの中で植物の心の存在や、自然の大きな循環システムに気づきはじめ、命について考えるようになったと記さている。
第1部では、実験室で生命体が生まれた日、まさに著者の専門分野から生命の誕生について考えた事柄が記されている。そのキーワードにはミネラルがあるとして語られ、生命体は太陽・大気・海・大陸という四つの系の相互作用によって発生し、条件がそろえば今現在も新たな生命体が誕生し続けているというのだ。
第2部は「新しい自然観に向けて」。
ここでは主に命について考えている。
タイトルの「死の瞬間に体重が減少する」は、ラットを使った実験によって、死によって生前の体重より軽くなったことを確認し、それを「命の重さ」としています。
2004年、アカデミー賞にノミネートされてヴェネチア国際映画祭で三部門を受賞した映画「21グラム
」は、まさにこの意味で用いられたものです。
そして著者は、命はエネルギーの凝縮体で、その重さは「経験」によって変わるものとしてもいます。
また命は生命体だけではなく、あらゆるものに宿り、自然のあらゆるものに繋がりながら、作用し合う循環システムであり、人と自然との関わりを見つめ直す必要性を科学者が説いているのが面白い。
書籍、この死の瞬間に体重が減少するの初版は10年前で、この先生が今どんな研究をしているのか気になるが、今回この書籍において命が誕生する未確定さを改めて考えさせられたきっかけとなったわけで、決して二百円では買えない価値があったと思う。
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