サツマイモや黒糖が原料の鹿児島の焼酎造りには、古来の技術が受け継がれています。
伝統の技術に各工程(仕込みや蒸留・貯蔵・熟成など)で蔵独自の製法が加えられ、今なお、個性豊かな焼酎が生み出されているのです。
仕込み
米麹と焼酎酵母、水を入れてかきまぜ、五日から一週間ほど25〜30度を保って一次もろみを造ります(一次仕込み)。これにサツマイモまたは黒糖などの主原料と水を加えよくかきまぜ、一週間〜十日ほどかけて発酵させて二次もろみを作ります(二次仕込み)。仕込みには、使う容器によってかめ仕込みとタンク仕込みの二種類があります。
- もろみが呼吸してマイルドになる「かめ仕込み」
- 杜氏の技や勘が決めてとなる「タンク仕込み」
素焼きの陶器のかめで仕込まれます。かめにある無数の小さい気孔を通して、もろみがゆっくりと呼吸します。さらにカメの上部だけ残して地中に埋めるので温度が一定に保たれ、対流によって気孔にすみついた蔵付き酵母の働きが促され、やわらかくマイルドな焼酎に仕上がるのです。
ステンレス製やほうろう生のタンクに仕込まれます。味が均一に仕上がるので最も多くの蔵元で利用されていますが、タンクの容量が大きい分容器内の温度を均一に保つための定期的な管理が欠かせず杜氏や蔵子の熟練の技や勘が求められます。
蒸留
焼酎の蒸留とは、沸騰したもろみから発生するアルコールの湯気を取り出す作業のこと。
90度くらいで沸騰させる常圧蒸留と気圧を下げて沸点を下げる減圧蒸留があります。
- クセの少ないすっきりとした仕上がりの「減圧蒸留」
- 原料特有の香りが広がる「常圧蒸留」
- まろやかで味わい深い「木樽蒸留」
気圧を下げると沸点も下がります。45〜55度の低温で蒸留すると、沸点の高い微量成分は抽出されにくいので、クセが少なくすっきりとした味わいの焼酎が出来上がります。
伝統的な常圧蒸留に対し1970年代前半に導入された減圧蒸留法は、米焼酎や麦焼酎に多く使われています。いも焼酎で減圧蒸留をするとソフトで呑みやすい仕上がりとなります。
通常の気圧では、88〜98度の沸点で蒸留されます。微量成分が多く抽出されるため、原料特有のコクや旨味を引き出し、香り豊かな焼酎に仕上がります。
現在、蒸留器はステンレス製がほとんどですが、昔使用されていた木樽蒸留器を使用して、個性ある焼酎造りに取り組む蔵もあります。
杉の木樽の隙間からガスが微量ずつ抜けて、まろやかで味わい深い焼酎が出来ます。
貯蔵・熟成
蒸留したての原酒はアルコール度数が高く、香り、味も強め。
貯蔵を一定期間行うことで香りを和らげ、味にまるみを持たせます。
そこで、かめ、タンク、樽のどれかで数ヶ月〜半年程度貯蔵するのです。
貯蔵した後、さらに二年、三年と熟成させることで味や香りに風格が出てきます。
なお、長期貯蔵という表示は、三年以上貯蔵した焼酎を総量の半分以上含んでいるものに限られています。
- 呼吸でまろやか「かめ貯蔵」
- 原料の味が生きる「タンク貯蔵」
- 熟成効果に優れる「木樽貯蔵」
- クラシックで熟成「音響熟成」
通気性の良いかめ壺で貯蔵した焼酎は、濃厚でまろやかな味になります。
素焼きのかめによる遠赤外線効果や、かめの無機物が溶け出すことで熟成が促進されるのです。
タンク貯蔵は密封状態になるため、焼酎のアルコールと水がよくなじみ、ガス臭など刺激的なにおいが除かれます。また、容器の成分が溶け出すことがないので、原料本来の味が生きた焼酎に仕上がるのです。
かめ壺と同様、通気性の良い木樽貯蔵は熟成効果に優れています。
樫の木樽貯蔵はワインやウイスキーで一般的ですが、焼酎も樫樽で貯蔵・熟成させるとかすかに木の色や甘い香りが移り、すっきりとした味わいが楽しめるように仕上がるのです。
貯蔵・熟成中のタンクや樽にトランスデューサー(音響振動器)を取り付け、焼酎にクラッシックの波動を伝えている蔵もあります。
音楽の波動でアルコールと水がよくなじんで熟成効果が増し、より深い味わいの焼酎になるといわれています。