実相院 (九州36不動霊場めぐり 5番札所 )

修験道における峰入りは欠かせない行事である。
寺を出て山野を踏破し、心身を鍛える行は、煩悩を去り、衣食住の欲を去り、清浄に仏道を修業する「頭陀の行」を実践するもので、六郷山では仁聞菩薩修業の跡を巡り、最後は熊野石仏の前で護摩を焚いて終わるものである。

国東半島の北西に位置している香々地町は、山間を流れる竹田川に沿って拓けている町で、上流にはハジカミ山、黒木山、尻付山に囲まれている山里であり、この辺り一帯は夷谷と呼ばれ、集塊岩が風蝕されて独特な奇岩が素晴らしく、夷耶馬渓は国立公園に指定されている。

ここ夷谷は、古くから石窟に六所権現社が鎮まり魔所と恐れられていた。
この六所権現社と甍を並べて実相院と霊仙寺はあり、六郷満山の末寺として歴史の裡に栄枯盛衰してきたという。
往古は実相坊と称していて、霊仙寺の僧坊であったと思われるが、正保年中(1644)、実相院に改められている。
本尊は、稀有の不動明王を安置し、鎮護国家の祈願所として祈祷を奉じ、現世の安穏を祈ったが、世情に山王一実神道がひろまると実相院も辺りの夷神社の別当を兼ね、神仏混淆の祈りを以て衆生の教化に努めたという。

脇壇には聖観音と薬師如来を合祀しているが、外陣の格天井に十二支と風神雷神の絵がある。
日ざしを浴びる縁からは、夷耶馬渓の景勝が望まれ、巡礼の心を癒してくれる趣がありました。
宣伝された風景には感動はないが、自然の風景には感動するものである。

(ご住職に頂いたハッサクを握りしめご満悦の私)

実相院から眺める渓谷は素朴に自然美が楽しめる。
瞬間の中に永遠を見る、それを表現するのが絵画であるとするなら、この風景こそ真に一幅の絵だと思う。

あおがばや 夷不動の 慈悲の手に 光りさやけし 実の相
第5番
ー天台宗ー 実相院 夷不動
〒872-1201
大分県豊後高田市夷1029
0978-54-3728

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