人数にして三十人くらい、そのいずれの方も熱心だ。
小生が金乗院さんのお堂に入る頃、すでに多くの信者さんが着座されていた。それぞれ護摩木に願い事を記したり、三礼をしたりと、皆さん住職の入場を待っておられるのだけど、寸暇を惜しんでその時を待っているのです。
小生は巡礼の身。ここに入らせていただいたのは偶然だけど、この熱気の中で同じように住職をお待ちする事にした。
そして、あの手紙のことを思い出した。
二ヶ月前から微妙に困ってる手紙で、どうして舞い込んだのか、そもそもどなたに聞かれたのか、本当に判らない事だらけ。今回はそんな手紙の話です。
そもそも返事しようにも、差出人が不明。
それに内容がシュールで、要は、「自分は修験道の行者で邪霊に取り憑かれているから浄霊をして欲しい」と便せん2枚にこの様な内容が書かれている。
これじゃまるで僕が御祓い屋さんみたいな扱い、おまけに差出人も不明ときて、どうしたものかと思うわけですよ。
ところが一字一字を丁寧に書かれていて、その筆圧というのでしょうか、ボールペンで記された字の便せんへの食い込み具合が深いものだから、イタズラとも思いにくい。
まあ修験道といっても宗派も様々だし、邪霊という類を口に出して言う様な人が修験とか言っているのも、これまた困ったもんだと思う。もちろん、どこかの本山系で本当に修験をされているのかもしれないけど、正直なところ怪しい御仁なのかもしれない。
だいたい邪霊とか悪霊とかに取り憑かれている修験者というのは、どうなんだろう、憑依とかいうのはどうだろうとも思うのです。
どこで始まったのか知らないけど、今なんてすごいスピリチュアルブームですね、それに占いブーム。
そんな機運も高まってるからかテレビも競ってオカルトや占いばかりで、どうやら種類もすごくあるんだと、それにオカルトを口にするタレントさんがこんなにも多いのかと、知らなかった人まで眼にするようになった。
そのせいだろうか、小生のところにまでこんな相談が来てしまったのは?
ただ僕も、霊の憑依としか思われないような現象は、今までにも結構見ているわけで、完全否定しているわけではありません。
ただ、この人が、どうして、邪霊に取り憑かれている事が判ったのかという事については、とっても不思議に思うのです。
この方が自分で気づいている邪霊は、この人に何らかの影響を与えているわけで、それを悪い影響だと考えて手紙を送ってきたのです。では、これがどうして貴方には邪霊のなせるワザだと判ったのか、判断できたのか、って事です。
一般的に考えるなら、これは貴方が積み重ねてきた長年の結果ですよ、と体の具合が悪いならそうお医者様にいわれるだろうし、例えば家にラップ現象のような事がおこったとしても、基礎に問題があったから家がきしんでいるのでしょうと建築家に言われるのでしょう。
それを、修験者のこの人が、その邪霊の存在に気づき、見抜いているというのは、大変な法力だとも思えるほどで、きっとその法力をもって邪霊も成仏するではないでしょう。
それなら、暫くその修業の場から離れて、よく寝て体力を取り戻したら大丈夫、きっとその邪霊はやっつけられます。
「即身成仏義」に「加持とは、如来の大悲と衆生の信心とを表す。仏日の影衆生の心水に現ずるを加といい、行者の心水よく仏日を感ずるを持と名づく」とあります。
仏日の影を感ずるためには、何よりもまず行者の心水、つまり心身が澄んでいなければならないのです。
僕なら心身が澄んでいないのにそれを邪霊のせいにするのではなく、法力の最たるご住職にお願いすることを託す事をまず考えようとするわけです。
今回頂いたお手紙。
ブログを見ておられるなら、上記のようなご相談をと思います。
これをお返事とさせていただきたく、どうぞお体ご自愛下さいませ。それでは、失礼致します。
第31番
ー真言宗ー 金乗院 出世不動
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