竹邑庵太郎敦盛、読み方は「ちくゆうあんたろうあつもり」となる。
まず店の名前の竹邑には人が集まるという意味があり、「あつもり」は、ここの名物あつもり蕎麦の「あつい」をかけてある。
ただ、「あつもり」と言っても「熱い」わけではなく、また、食べたからといって「暑く」なることもない。どちらかなら「温もり」(あつもり)くらいが適当か。
「あつもりそば」は、檜のセイロの上に、いったん湯に通された蕎麦がのせられて蒸される温いそばであって、熱いつゆでいただく。添えられる薬味は山盛りのねぎ・鶏卵・山葵だ。
このように、あつい蕎麦を、あつい付け汁で食べるスタイルの発祥は判らないけれど、今のスタイルよりも歴史があるのは事実であって、この基の食べ方が出来た17世紀頃では、蕎麦切りされた蕎麦を茹でずそのままに蒸して供されたとされるから、もう少しパサッとした感触もあったのではないかと思う。
さて、このお店のお蕎麦は随分と賛否別れるところにあるけれど何となくお気に入りのお店。暫く暖簾をくぐることがありませんでしたが、9月9日まで内装の壁や床なんかを綺麗にしていたらしく、外装も新店のようなお店となっていて驚きました。
さて、メニューにはこの「あつもりそば」と金箔ののったもの、それに「追っかけ皿そば」がある。
あついのと、上に金箔が飾られたお殿様向けのもの、そして冷たい「追っかけソバ」は出石の皿ソバ風で出される。
注文は、あつもりのみ。
理由は水が良いからで、あついあついと書いているからお判りだと思うけど、蒸し上げられたせいろの中から、蕎麦の香りは基より水の香りも立ち上がるわけで、これもポイント。
間違っても、湯気がソバの香りを消すことなどなく、押し上げてくれる様な湯気。
それをこう、付け汁につける前段階で、鼻と顔面全体で感じる事ができるからこそ、汁につけていただく前から唾液が口の中に充満する。その汁と言っても、このおみそ汁を頂く様なお椀には葱やら玉子やらが入っていて、これをかき混ぜておいて付けていただくのです。
蕎麦は甘皮も丸ごとにして挽いてある十割で黒い、そしてその香りが口の中でも充満してゆく。
京都には美味い蕎麦屋さんが沢山あります。
そして、歴史としては古いだろう、蕎麦切りあつもりスタイルではない冷たい蕎麦が良しとされている現在もあります。これからこの蕎麦のスタイルにどんな変化が起こるのか、そんなことを考えていると夜も眠られ無くなっちゃう、です。
さて、このあたり「あつもり」の歴史を調べようと思って、ググッてみて驚いたのは、江戸ソバリエの著者、吉田悦花さんが記されているように、この竹邑庵太郎敦盛が東京にも支店を出している点。
本店は、京都御所の近くにあるそうです。
もともと「熱盛」というのは、茹で上げて水にさらした蕎麦を熱湯にくぐらせ、あたためた汁で食すもの。この店では、茹でた蕎麦を蒸篭にのせて蒸すという形をとっているようです。
蒸された蕎麦は、むっちりとして粘り、ボソボソしているのですが、卵でとろみがついたネギがたくさん入った汁に混ぜると、それなりに滑らかに、食べやすくなるようです。
江戸ソバリエ―蕎麦を極めるソバのソムリエオフィシャル・ハンドブック![]()
いつもそんなに興味を持たずに、あの蕎麦でも的に捉えてきたので驚きでした。蕎麦切りをしてから、茹でて冷やしてざるに盛るスタイルの根源的なものだけに、東京進出ならぬ里帰りというわけか、いや、この辺りの歴史が全く判らないから今度、蕎麦工房 膳さんに教えを請うことにしようか。
それにしても、これは美味さなのか、立地なのか店主の器量なのか、何にしても昼時はいつも一杯で満席、一日のうち11:00から15:00までの短時間で商売をされている。こうなると、なぜか店名の「竹邑」という言霊にもなにか秘められたものまで感じるではないか。以前に書いた私のお店、「京の田」だけど、「京竹邑の田」とか、いや、やるまいやるまい。
竹邑庵太郎敦盛
京都市上京区椹木町通烏丸西入ル242-12
075-256-2665
11:00 15:00
日祝休
竹邑庵太郎敦盛 (そば / 丸太町、烏丸御池、二条城前)
★★★☆☆ 3.5