全国の不動尊霊場と概要

「いつでもどこでも誰からでも学び取るほどの謙虚な姿勢で行こう」とは小生の基本的スタンスですが、やはりいつも起伏やブレが生じています。
小生にとって霊場とは、生きることへの感謝とその感謝の気持ちを常に起伏なくブレさせずに尚生きさせていただけるところ。そんな決意に似た思いを持たせていただけるのが不動尊霊場です。
さてここでは、全国の不動尊霊場と概要を記します。
全国の不動尊霊場への巡礼。本当に死んでしまうまでにはご縁を頂きたいものです。

◆北海道三十六不動尊霊場

北海道に平成元年(1989)に成立した不動尊霊場。
旭川市を中心にした北部に位置する1番から9番までの札所を発心の道場、東部に広く分布している10番から20番までが修行の道場、夕張市から渡島半島にかけての21番から28番までが菩提の道場、札幌市・小樽市を中心にした29番から36番を涅槃(ねはん)の道場と呼んでいる。
北海道の雄大な自然を背景に、10日前後で巡拝の旅ができる。
★問い合わせ先…北海道三十六不動尊霊場会事務局 滝泉寺 0143-84-2437

◆東北三十六不動尊霊場

東北6県に昭和62年(1987)に開創された。
各県を六波羅蜜に喩え、山形県を布施の道場、秋田県を持戒の道場、青森県を忍辱(にんにく)の道場、岩手県を精進の道場、宮城県を禅定(ぜんじょう)の道場、福島県を智慧の道場として、それぞれに6か寺ずつ配している。真言系寺院を中心にして禅系、修験系の寺院が見られる。
1番「慈恩寺」は、神亀元年(724)草創、天平18年(746)の婆羅門僧正の開基というかつての巨刹。法相・真言・天台の3宗が一つになった慈恩宗の独立本山を形成する。現在も広い境内には大堂伽藍が連なり、寺宝も多く、本堂は国の重文。2番湯殿山「大日坊」は出羽三山の奥ノ院と言われる修験道の霊場で、真如海上人の即身仏が安置されている。4番「大樹院」の本尊は雨乞いの「雷不動」のいわれがある。羽黒修験の根本道場、6番羽黒山「荒沢寺正善院」は、東北地方指折りの古刹。地蔵堂、不動堂、常火堂などが並び、分霊は各地に分祀された。8番「嶺梅院」の不動明王は元は金比羅宮の本地仏だったもので、明治維新の神仏分離で当寺に移され、地元の人に成田不動と呼ばれて親しまれている。9番「多聞院」は土崎港を臨む高台にあり、かつては北前船の一行が航海の安全祈願をした。14番「大円寺」は大鰐温泉に隣接し、坂上田村麻呂も戦勝祈願したと言う。15番「景勝院」は江戸期の五重塔のある東北地方の名刹。18番「青龍寺」には昭和大仏・五重塔が建立された。23番「西光寺」は達谷窟で知られ、毘沙門堂、不動堂、岩面大仏などがあり、丈六の不動尊坐像は県の文化財。24番「金剛寺」は、千葉の成田山から本尊不動明王を勧請(かんじょう)した。27番「松景院」は古くからの修験道の祈祷寺。28番「瑞巌寺五大堂」は日本三景の一つ松島の景勝地にあり、五大明王を祀る。35番「徳善院」は山本不動尊と言われ、本尊不動明王は洞窟に安置。
★問い合わせ先…東北三十六不動尊霊場会事務局 松景院 0229-34-2903
★案内書…冨永航平著『東北三十六不動尊霊場記』(東北三十六不動尊霊場会刊)

◆会津五色不動尊霊場

「会津曼荼羅若がえり五色不動尊めぐり」として平成元年(1989)に、福島県会津地方の密教寺院5か寺によって発足した。
東京方面からだと周辺の観光を楽しみながら1泊2日で巡礼できる。
各霊場では、訪れる方々への御接待に努めている。
★問い合わせ先…会津五色不動尊霊場会事務局 如法寺 0241-45-2061

◆北関東三十六不動尊霊場

北関東の群馬県、栃木県、茨城県に昭和63年(1988)に設立された霊場。
群馬県は身密修行の道場、栃木県は口密(くみつ)修行の道場、茨城県は意密修行の道場で、北関東三十六不動尊霊場は併せて三密修行の道場と言う。
各霊場は、住職が居て、護摩を焚(た)く寺を基準にして選んでいる。山あり、川ありの自然を楽しみながらお詣りでき、宿泊は周辺の温泉でできる。
群 馬1泊2日、栃木1泊2日、茨城2泊3日で巡拝計画を立てるとよい。順番にはこだわらずに、全部の霊場を残らず巡拝することが大切である。事前に連絡があれば、住職の法話を聞くことができる。
1番「水上寺」の本尊大日大聖不動明王は、明治21年(1888)に大本山成田山新勝寺から勧請(かんじょう)した。五穀豊穣、万民豊楽を祈願する。地域の人々と交わるための年間行事が多い。近くに水上温泉がある。3番「大福寺」境内には伝授大師最澄が投げた独鈷(どっこ)が当たった岩から水が湧き出したと伝えられる、独鈷泉がある。4番「不動寺」は妙義山を望む地にあり、切妻造の仁王門、不動明王、石塔婆は県の文化財。7番「長安寺」の本尊釈迦牟尼如来は人々を大飢饉から救った「なさけの釈迦」と口伝される。護摩道場威音王堂に安置されている不動明王は煩悩や障害を焼き払い悪魔を降伏させ、人々を擁護するという。10番「医王寺」の本尊は大日大聖不動明王で本堂に祀られており、不動堂に祀られている不動明王像の像高は1.7メートル。11番「光恩寺」は堂山古墳に接しており、本堂には秘仏不動明王のほか古墳からの出土品も保管されている。13番「泉龍寺」の不動堂の大聖不動明王は秘仏で25年に1度の開扉といい、朱色の鐘楼門は目を見張る。14番「延命寺」は鎌倉期の創建で、身代不動尊を祀っている。18番「持宝院」の本尊不動明王は商売繁盛の御利益があるといい、参拝客の多い栃木県内有数の寺院。開運不動明王を祀っている20番「崇真寺」は、本尊胎蔵界大日如来と白衣観音画像が、ともに県の文化財。22番「光明寺」の護摩堂の上には露座の力感あふれる不動明王像が載っている。25番「一乗院」の本尊は身代不動尊と言われ、毘沙門天・薬師如来坐像は県の文化財。27番「神崎寺」は水戸藩徳川家と縁の深い巨刹で、鎌倉時代作の不動尊は開運不動と呼ばれ、安産祈願の観音霊場としてもにぎわいを見せる。33番「妙法寺」は舜義上人が入寂してミイラになった即身仏が、金色不動尊とともに寺宝になっている。34番「永光寺」境内は3000株の牡丹の花で彩られている。36番の「不動院」は、本堂、楼門、三重塔と豪壮な伽羅を誇っており、板橋不動尊と古くから人々に信仰されている本尊は国の重文で、開運、安産、子育ての霊験あらたかという。
★問い合わせ先…北関東三十六不動尊霊場会事務局 持宝院 028-652-1488
★案内書…『北関東三十六不動尊霊場』(北関東三十六不動尊霊場会刊)

◆関東三十六不動尊霊場

関東地方の1都3県に昭和62年(1987)に成立した霊場で、神奈川県7カ所を発心の道場、東京都19カ所を修行の道場、埼玉県5カ所を菩提の道場、千葉県5カ所を涅槃の道場とする。
霊場の中には、五色不動、関東三不動(大山不動、高幡不動、成田不動ーー他の組み合わせ方もある)、真言宗智山派の関東三山(成田山、川崎大師、高尾山)などが含まれ、年間を通じて人々の信仰をあつめている有名寺院が多い。
雨降山「大山寺」が1番霊場。天平勝宝7年(755)に良弁が創建、聖武天皇の勅願寺だったと言われる。その後、修験道の霊地として発展、江戸時代には大山詣りが庶民の信仰を集めた。明治維新の神仏分離で寺域は女坂の中間に移っており、大山寺の元の場所には現在、阿夫利神社下社が建つ。本尊の鉄造不動明王像は国の重文。ケーブル駅に至る参道には土産物屋が並ぶ。2番は曹洞宗の古刹大雄山「最乗寺」で、道了尊あるいは清瀧不動尊として広く親しまれている。杉木立に囲まれた広い境内には天狗信仰にまつわる鉄製の大下駄がある。宗門の若い僧を教育する専門道場としても知られる。3番「延命院」は成田山の横浜別院。川崎大師として余りにも有名な7番「平間寺(へいげんじ)」は、厄除け大師として初詣でばかりでなく年間を通じて参詣者で賑わっている。平安時代に武士平間兼乗が、夢のお告げにより海中より大師木像を得て草庵に安置し、日夜供養したことに始まると寺伝が伝える。入母屋造の不動堂に成田山の御分躰不動明王が祀られている。8番が高尾山「薬王院」有喜寺。修験道の根本道場として隆盛してきた。本尊は不動明王の化身という飯縄(いづな)大権現で、毎年3月の第2日曜日に行われる「火渡り祭」は荒行として有名。自然の深い高尾山は、ハイキングコースとしても都民に愛されている。高幡不動としてよく知られる9番高幡山明王院「金剛寺」は、草創年代は奈良以前にさかのぼるとも言われ、後に清和・陽成天皇の勅願寺となる。不動堂・仁王門の古建築は重文、五重塔は昭和時代の建立。三宝寺池に面している11番「三宝寺」は、元石神井(しゅくじい)城の一隅といい、江戸時代には屈指の大寺として栄えていた。17番「満願寺別院」は寺号滝轟山明王院、等々力渓谷の不動の滝で知られる。20番「深川不動堂」は、富岡八幡とともに下町の人々の信仰をあつめ、門前に繁華街を築いてきた。西新井大師と呼ばれている26番「総持寺」は、弘法大師の開基と伝えられる。寺域は壮大な伽羅を誇っており、不動堂は当山の修行道場。牡丹の名所としても知られる。28番「喜多院」は川越大師とも言われ、天台8壇林の一つで、関東でも屈指の名刹。江戸城紅葉山の別殿を移築した徳川家光誕生の間があり、多数の文化財も保存されている。境内の五百羅漢の石造群でも名高い。30番の不動ケ岡不動尊と呼ばれる「総願寺」は、利根川流域の人々の信仰をあつめ、毎年2月の節分行事「鬼追い豆まき式」は350年の伝統を誇っている。成田のお不動さんと呼ばれる36番、成田山「新勝寺」は、日本中から信仰を得ている。号は成田山明王院神護新勝寺。天慶3年(940)頃の開創と伝えられ、江戸時代には成田詣でが習俗として定着し、江戸出開帳も行われ、成田の不動さん信仰が人々の中へ浸透していった。
★問い合わせ先…関東三十六不動霊場会事務局  岩槻大師048-756-1037
★案内書…『関東三十六不動霊場』『関東三十六不動霊場会刊』

五色(東都五眼)不動尊

江戸時代から人々に親しまれてきたお不動さんで、当時は五眼不動と言われていた。東西南北、中央の五方角を色で示す者で、目に色があるわけではない。
現在は、東京都内6ケ寺に祀られている。
目黒不動と呼ばれる「瀧泉寺」は、慈覚大師円仁が当地で不動明王の霊夢を感じ自ら尊像を刻んで安置したことに創まるという。江戸時代に徳川家光の帰依を得てから参詣者で賑わうようになった。境内の独鈷の滝は病平癒の霊験があり、甘藷を広めた青木昆陽の墓もある。目白不動と呼ばれる「金乗院」の目白不動明王像は、元は新長谷寺の本尊だったもので、第二次世界大戦後、当寺に移された。
★問い合わせ先…各寺院

◆武相不動尊霊場

神奈川県の横浜市及び川崎市の寺院を中心に、東京都内の3ヶ寺を加えて28札所からなる霊場。昭和43年(1968)の成立。各寺院の秘仏御開帳とその霊場巡拝は酉年5月1日から5月28日にかけて行われる。団体バスで2日、電車や路線バスを使って巡拝すると3〜4日かかる。
1番川崎大師「平間寺(へいげんじ)」は厄除大師として有名、関東三十六不動尊霊場の七番札所でもある。2番「大明王院」は身代不動尊を祀り、厄除け・交通安全祈願の信徒で賑わっている。4番「明王院」は当不動尊霊場とともに、玉川八十八カ所霊場30番の札所でもある。8番「金蔵寺」は江戸時代には武州屈指の天台宗の名刹であった。今も大梵鐘や隠れキリシタンの石灯籠などを伝え、関東三十六不動尊霊場5番札所でもある。10番「福聚院」は火伏せの不動尊として近隣・近在の信仰をあつめている。12番「東漸寺」の本尊不動明王は出世不動尊として信仰され、また智慧の仏さま文殊菩薩も祀られており、受験期に祈願に訪れる人が多い。18番「弘明寺(ぐみょうじ)」は江戸時代に徳川幕府から御朱印状を下附されていた古寺で、坂東三十三観音霊場の14番札所、波切不動尊は徳川家光の寄進という。19番「正泉寺」は玉川八十八カ所霊場の8番札所。22番「宝幢院」は玉川八十八カ所霊場の88幡結願所。境内の遍照密院に奉祀されている不動明王は、多摩川不動尊として息災増益、家内安全、病気平癒の霊験があるという。かつては末寺53か寺を擁する本寺だった。28幡が高幡不動「金剛寺」で関東三十六不動霊場の9番札所。
★問い合わせ先…大明王院  044-865-8111

◆北陸不動尊霊場

石川県・富山県・福井県の北陸3県にまたがる不動霊場。能登半島から始まって富山へ、そこから金沢へ戻って福井を経て小浜を回るコースが一般的。
1番「長楽寺」は天平時代の創建で、室町期には七尾城主畠山氏の祈願所として33坊を数え権勢を誇っていた。現在の寺域は天正期(1573〜92)以降の再興。毎月21日が厄除大師縁日、28日が奥ノ院不動尊縁日。8番「明泉寺」は飛鳥時代の創建といい、孝徳天皇の勅願寺として鎌倉・室町期に隆盛、重文の石造五重塔は鎌倉時代の遺構。9番「妙観院」は弘法大師開基と伝えられる七尾名所、七不思議の伝説がある。11番「円光寺」は加賀藩八家の一つ長家の菩提寺で、毎年7月7日に不動祈祷の行事がある。12番「上日寺」は富山県氷見地方の厄除け・招福の名刹。20番「日石寺」は行基作と伝えられる不動明王像を本尊とする祈願寺で、子授け、安産、眼病平癒に霊験があり、不動祭りは毎年8月26〜28日に行われる。24番「不動寺」の本尊不動明王像は3年目ごとに開扉される。27番「医王寺」は山中温泉守護のために草創されたと伝えられ、陶製金剛童子立像は、重文。32番「窓安寺」は5月27〜28日に不動明王祭が行われる。35番「円照寺」の不動明王像は藤原時代作。美しい庭園がある。36番「羽賀寺」は、行基の開創と伝えられる元正天皇の勅願寺で、本堂は重文。そのほか多くの文化財を所蔵している。
★問い合わせ先…北陸不動尊霊場会事務局 長楽寺  0767-72-2112
★案内書…「北陸不動尊霊場案内」(北陸広域観光推進協議会取扱)

◆東海三十六不動尊霊場

愛知県・岐阜県・三重県にまたがる不動尊霊場で、平成元年(1989)に成立。名古屋市内に11か寺ある。
巡拝には7〜8日かかるが、各霊場周辺には観光地があるので、観光を兼ねて巡る人が多い。
1番成田山名古屋別院「大聖寺」は通称犬山成田山と呼ばれ、開創は昭和28年(1953)と新しい。千葉県にある大本山成田山新勝寺の本尊不動明王像の分身を祀っている。広い境内地には諸施設がよく整備されている。2番「寂光院」の不動堂に祀っている厄除け不動尊は、弘法大師作との言い伝えがある。3番「地蔵寺」は、神亀3年(726)に行基が開創したと伝えられ、本尊延命地蔵菩薩とともに脇侍不動明王を祀っており、信仰をあつめている。4番「萬徳寺」は弘法大師ゆかりの寺で、室町時代建立という檜皮葺き(ひわだぶき)の多宝塔は重文。5番「甚目寺」の絹本着色不動尊像は俗に青不動と呼ばれている。8番「建中寺」は、尾張徳川家の廟所で、不動堂に祀られているお不動さんは代々尾張家に伝えられていた秘仏という。10番「宝生院」は大須観音の名でよく知られている。本尊聖観世音菩薩、脇侍不動明王。毎月18日の観音さまの縁日、28日のお不動さまも縁日は大変な人で賑わう。尾張三十三観音霊場の1番札所。豊川稲荷として親しまれている17番「妙厳寺」は、広大な境内を持つ曹洞宗の名刹。本尊は、千手観音菩薩・豊川●枳尼真天(だきにしんてん)、(●のところの字は「託」という字の「言」を「口」に変えた字です。)脇侍不動明王。旧暦2月の初午、5月の春季大祭、11月の秋季大祭と行事で賑わう。18番「遍照院」は知立の弘法さんと呼ばれている。21番「大御堂寺」は野間大坊と呼ばれ源頼朝最期の地として知られており、頼朝が奉安した地蔵菩薩と不動明王が祀られている。女人高野あるいは丹生大師と呼ばれて親しまれているのが24番「神宮寺」。大石不動と呼ばれているのが25番「不動院」で、ムカデランの群落は天然記念物。27番「常福寺」の本尊五代明王像は藤原時代作の重文。29番「大聖院」の本尊不動明王立像も藤原時代作の重文。32番「圓鏡寺」は弘法大師創建という真言宗岐阜県一の名刹で、不動明王像は本尊の聖観音像、金剛力士蔵とともに重文。36番「興正寺」は尾張高野といわれる尾張徳川家の祈願寺。江戸時代建立の五重塔は壮麗で重文。
★問い合わせ先…東海三十六不動尊霊場会事務局 成田山名古屋別院「大聖寺」 0568-61-2583
★案内書…東海三十六不動尊霊場会編「東海三十六不動尊巡礼」(朱鷺書房刊)

◆三河三不動霊場

愛知県内の三河地方の3か寺でつくる霊場で、昭和30年代に成立した。
ゆっくりと1日で巡拝できる。
1番「総持寺」は平安初期の開創で、本尊不動明王は弘法大師直作の尊像といわれる。流汗不動明王の尊号は、信徒の願いをかなえようと日夜汗を流しているという言い伝えからという。2番「無量寺」は平安末期の開創で、本尊西浦不動尊は開運、厄除けで知られる。旧正月28日の初不動大祭は数万の信者であふれる。境内には厄除け戒壇巡り行場もある。3番「養学院」は、本尊みちびき不動明王、宗祖弘法大師、派祖理源大師、大峯開山神変大菩薩を祭祀している。御殿山上の、みちびき不動明王は身の丈3メートルの尊像で、人々の願いに従って苦を抜き楽を与えてくれるという。
★問い合わせ先…三河三不動霊場会事務局「養学院」 0533-86-2570

近畿三十六不動尊霊場

近畿地方の大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県に、古寺顕彰会が中心になって開設した霊場。
宗派にとらわれずに一般の人々の立場から霊場寺院が選定され、昭和54年(1979)に発足した。
1番「四天王寺」は、聖徳太子の開基による日本最古の官寺で、和宗総本山。不動堂には亀井不動(水かけ不動尊)が祀られ、人々の信仰をあつめている。2番「清水寺」には玉出の滝があり、その奥の石窟にお不動さまが祀られている。3番「法楽寺」は田辺の不動さま、4番「京善寺」は桑津の不動さんと呼ばれて親しまれている。5番「報恩院」は北に向いているところから、高津の北向不動といわれる。一つの願い事を一心に祈れば願いをかなえてくれるのが6番「太融寺」の一願不動さん。7番長柄の「国分寺」は厄除けの水かけ不動を祀っている。9番「大龍寺」は弘法大師が入唐の祭に所願成就を、帰国時に報恩謝徳を祈ったため再度山と呼ばれる。中風除けの祈祷で知られる。13番「大覚寺」は真言宗大覚寺派大本山で、嵯峨天皇が離宮として造営した仙洞御所に創まり、後に寺にしたもので、五大堂に本尊五代明王像を祀っている。真言宗御室派総本山の14番「仁和寺」は、石仏のお不動さんを祀っており、水かけ不動と親しまれている。17番「曼珠院」は門跡寺院で、平安後期作の絹本着色不動明王像(黄不動)は国宝。庭園は国の名勝。18番「聖護院」は本山修験宗の総本山で、平安後期作の本尊不動明王像2体は重文。8月に山伏行列がある。19番「青蓮院」も門跡寺院で、同じく平安後期作の絹本着色不動明王二王子像(青不動)は国宝。名園を持つ。真言宗智山派総本山の20番「智積院」は、国宝の障壁画で知られ、旧本堂に不動明王像が祀られている。21番「同聚院」は東福寺の塔頭(たっちゅう)寺院で、五大堂に安置する不動明王像は2.65メートルほどもある。22番「不動院」の本尊不動明王像は、皇居を守るために北向きに安置されたという。23番「上醍醐寺」の五大堂には、盗難除け、災難除けの五代明王像が祀られている。24番「岩屋寺」の本尊不動明王像は石良雄の念持仏といわれ、四十七士にまつわる遺品がある。比叡山延暦寺の東塔に属する26番「無動寺明王堂」の本尊不動明王坐像は鎌倉期作の重文。ここは回峯行の根拠地でもある。生駒の聖天さんと親しまれているのが29番「宝山寺」で、真言律宗の大本山。修験道の霊場で、本尊不動明王像は江戸期のもの。34番「根来寺(ねごろじ)」は新義教学の根本道場として栄え、真言宗三大学山の一つに教えられていた。新義真言宗の総本山で不動堂には錐鑽(きりもみ)不動尊という、真言宗中興の祖覚鑁(かくばん)上人の難を救ったという身代不動を祀っている。35番「明王院」は、高野山最古の部類の寺院で、高野山真言宗別格本山。平安前期作の絹本着色不動明王像(赤不動)は重文。36番が「高野山」の「南院」で、本尊不動明王立像は平安中期作の重文。弘法大師が唐から帰国するときに海上で暴風に遭った際平安を祈ると、明王が利剣を振るって荒波を鎮めてくれたという言い伝えから波切不動と呼ばれている。
★問い合わせ先…近畿三十六不動尊霊場会 0721-56-2372
★案内書…「近畿三十六不動尊」(古寺顕彰会刊) 近畿三十六不動尊霊場会編「近畿三十六不動尊巡礼」(朱鷺書房刊)

◆四国三十六不動霊場

徳島県、高知県、愛媛県、香川県の4県にまたがる霊場で、ほぼ四国北東部にまとまっている。
昭和63年(1988)に成立。毎年1回、不動の火祭りが行われている。5泊6日で巡礼できる。
1番「大山寺」は弘法大師ゆかりの波切不動を祀っている、開運、良縁の寺。毎年1月の第3日曜日に、三方に載せた巨大な重ね餅を持ち上げて歩く「力餅」の行事がある。四国別格二十霊場の第1番。2番「明王院」は鼠除不動尊と呼ばれ、豊作厄除けに霊験があるという。3番「最明寺」は北条時頼ゆかりの寺で、毘沙門天立像は重文。4番「箸蔵寺」は弘法大師開創の寺で、琴刀比羅宮の奥ノ院といわれ琴平とともに金毘羅信仰の中心になっている。5番「密厳寺」は弘法大師の手になる不動明王を祭り、火伏せ・家内安全の御利益がある。8番「長善寺」の不動明王は、腫れ物・出来物・癌封じに霊験がある。10番「東禅寺」のお不動さんは万民幸福に霊力があるという。11番「童学寺」は弘法大師が童子のころ学問した寺で、藤原時代作の薬師如来坐像は重文。12番「建治寺」は祈祷寺。建治の滝不動、または身代不動とも呼ばれる。13番「密厳寺」は、かつて洪水に悩まされた人々を救ったという不動霊験談が伝わり、現在も災難除けの祈願所。14番「正光寺」は弘法大師が不動尊を祀って往来の安全を祈願した言い伝えから、交通安全の霊験がある。17番「宗安禅寺」は川上不動尊と呼ばれる修験者の霊場で、鎌倉期作の不動明王坐像は、持国天・増長天像とともに重文。21番「満願寺」は天平6年(734)開創といい、金毘羅大権現を守護神とする神仏混淆の寺として知られる。22番「興隆寺」は、この地方きっての名刹で、身代不動尊を祀っており、重文の本堂を初め文化財を数多く所蔵している。23番「極楽寺」は石鎚山(いしづちさん)真言宗の総本山で、石鎚山信仰の根本道場。弘法大師を宗祖と崇め、波切不動尊を祀っている。24番「隆徳寺」の不動尊は幼児の夜泣きや疳の虫に御利益がある。27番「常福寺」は弘法大師の金剛杖から椿の大木が育ったという言い伝えから椿堂と呼ばれ、火伏不動が祀られている。28番「萩原寺」は弘法大師開創の寺ともいわれ、不動明王像は大師自作と伝えられる。秋は、境内が萩の花で埋めつくされる。29番「明王寺」は山岳修験道・不動宗の大本山で、河内不動として親しまれている。30番「妙音寺」は夢不動と呼ばれ、本尊阿弥陀如来像は藤原期作の重文。31番「御盥山不動坊」の不動明王は身の丈96センチの木像で、難病・持病に霊験があり、また、良縁を授けてくれるという。32番「天福寺」は天平年間の行基草創という古寺で、身代不動を祀っている。33番「浄土寺」は雨乞い・落雷除けの霊力がある雷不動さん。35番「厄除不動明王院」の波切不動尊は、四国最大級の立像。
★問い合わせ先…四国三十六不動霊場会事務局「海岸寺」(御盥山不動坊) 0877-33-3333

九州三十六不動霊場

九州のほぼ全域に広がっている不動霊場。
仏の里・大分県の国東半島の寺々から始まる巡拝は、温泉の町別府を経て、風光明媚の地九州各地を7〜8日間で巡る。全行程は1530キロ。
一度に全てを巡れない場合は県単位、あるいは地域ごとに分けて巡拝するとよい。各霊場は昭和60年(1985)の創設以来、不動尊の熱烈な信徒に支えられている。
国東半島には1番から7番までの札所がある。
1番「両子寺(ふたごじ)」は奈良時代に開創された古寺で、深山幽谷の地にあり、護摩堂には不動明王のほか諸仏が安置されている。九州西国三十三観音霊場の6番、六郷満山の霊地。2番「神宮寺」も奈良時代の開創という古い寺で、密教法具のほか、鬼面、懸仏などを所蔵している。4番「文殊仙寺」の本尊は智慧授けの文殊菩薩。鎌倉以前の作と伝えられる不動明王を所蔵。6番「無動寺」は、かつては六郷満山中屈指の道場だったという。本尊不動明王は平安期の木彫坐像で総高2メートル余り、厄除け身代わり不動として近隣の人々の信仰をあつめている。7番「応暦寺」も六郷満山の中核を占めていた古寺で、本尊不動明王坐像は県の文化財に指定されている。9番「円寿寺」は、かつては藩主大友家の祈願・菩提寺で、現在も人々に願かけ不動と親しまれている。13番「潮満寺」は日南にあり、本尊波切不動明王は海上安全祈願のお不動さんとして漁業関係者の信仰をあつめている。17番「福昌寺」は元は鹿児島市内にあった島津氏の菩提寺で、明治時代の廃仏毀釈で現在地に移転した。お不動さんは波切不動尊。19番「長寿寺」は地元では木原不動尊といって親しまれており、春季大祭の2月28日には火祭りの大荒行と湯立ての荒行が修される。20番の九州曹洞宗の名刹「大慈寺」は、かつては加藤清正・細川忠利などの熊本藩主代々の帰依を受けた。21番「蓮華院誕生寺」は、法然上人の師皇円上人の誕生の地といわれ、奥之院に一願成就の不動明王を安置、壮大な五重塔がそびえる。24番「誕生院」は新義真言宗の開祖覚鑁(かくばん)の誕生地に建立された寺で、本尊は和歌山県の根来寺(ねごろじ)から勧請(かんじょう)した錐鑽(きりもみ)不動明王。28番「千如寺」は、かつては歴代天皇の勅願霊場に定められ、諸国大名の祈願所として栄えた名刹。30番「延命院」は欽明天皇25年(564)に鎮護国家の祈願所として開創されたという古刹で、その後佐賀藩鍋島氏の祈祷寺。本尊は一願不動尊として人々に信仰されている。34番「鎮国寺」は宗像神社の別当寺で鎮護国家の根本道場として発展、護摩堂安置の不動明王立像は藤原時代作の重文。36番結願寺の「東長密寺」は、大同元年(806)に唐から帰朝した弘法大師が興したという我が国最初の密教霊場。創建当初は海岸近くだったが、16世紀に現在地に移転。本堂は昭和59年(1984)に建立された。千手観音立像は藤原時代作の重文、その他密教法具などの寺宝が多い。
★問い合わせ先…九州三十六不動霊場会事務局「臨済寺」 0975-43-4330
★案内書…富永航平著「九州三十六不動霊場」(九州三十六不動霊場会刊)

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